アメット
第六章 願望

 クローリア専用のパソコンを購入してから、三週間後――

 シオンの予想は、確信に変化する。

 やはり、クローリアは物覚えがいい。

 その証拠に最初は苦労していたパソコンの操作であったが、数日で最低限の使い方を覚える。

 キーボードを打つ仕草はたどたどしく、時折打ち間違いをしてしまうが、毎日使っていれば身体が覚えブラインドタッチができるだろう。

 クローリアに施す勉強は、幼い子供が受けるレベルから開始している。

 最初からレベルが高い勉強を行っても理解できないので、シオンこのレベルを選択する。

 最下層で読み書きを学んだとはいえクローリアはこのような勉強を行った経験がないので、勿論苦労が付き纏う。

 しかし勉強することが面白いのだろう、次々と出される問題を解いていく。

 だが、今日の問題は難しかったのだろう、パソコンの画面を凝視し苦悶の表情を浮かべているクローリア。

 何度も言葉に出して問題文を読み懸命に整理しようとするが、答えが見付からないらしく首を傾げる。

 その姿にシオンは画面を指示しつつ、どのような問題なのか説明していく。

 シオンの説明にクローリアは頷きながら聞き入り、必死に理解しようとする。

 するとシオンの説明によって引っ掛かった部分が解決したのだろう、苦悶の表情から一変、明るい表情に変化する。

「これを使うのでしょうか」

「そう。で、この部分を……こうして……」

「では、答えはこうでしょうか」

「正解」

「当たりました」

「凄い」

「そ、そうでしょうか」

「こんなに早く、解けるなんて」

「これは、幼い子が解かれるものと……」

 それについて、シオンは頭を振る。いくら幼い子供が解く問題とはいえ、人によっては難しく感じる。

 ましてやクローリアは、学問という学問をきちんと受けていない中で解いたというのに、きちんと回答を出した。

 だから「凄い」と評したとシオンが話すと、クローリアは微かに紅潮する。

 クローリアの変化にシオンはクスっと笑うと、今日の夕食は自分が作ると言う。

 その発言にクローリアは腰掛けていた椅子から立ち上がると「自分が作る」と、言い返す。

 それに対しシオンは頭を振ると、勉強できる時にやっておいた方がいいと言い、キッチンへ向かう。

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