アメット
「私で、よろしいのですか?」
「信頼している」
「旦那様のご命令なら……」
「頼む」
「畏まりました」
その声音がいつもの声音と違っていたことに気付いたグレイは、アムルに何を考えているのか問う。
主人からの質問にアムルは躊躇いながらも「一時的なものでも、娘ができたことが嬉しい」と、話す。
アムルの言葉にグレイは表情を緩めると、子供がいることは心の支えになると伝える。
アムルは自身の幸せを犠牲にし、グレイに仕えている。
グレイこそが統治者としてドーム全体を支配するに相応しい人物と見ており、この人物なら明るい未来を作って貰えるのではないかと考えていた。
だからこそこの歳になっても独身を貫き、精一杯グレイに仕える。
伴侶を娶れ。
と、グレイは何度か口にしているが、アムルが首を縦に振ることはない。
これが自身の仕事と決め、それを全うしようとしている。
その人物に、一時的であるが娘ができた。
堅苦しい人物と見られているアムルの変化にグレイは、娘となったクローリアに会うように勧める。
「今は、仕事があります」
「それは、後でいい」
「で、ですが……」
「行くんだ」
「……はい」
グレイからの命令にアムルは頭を垂れると踵を返し、退室する。
アムルの後姿にグレイは嘆息すると、肩の力を抜きもう少しゆとりを持って生活してもいいのではないかと思いはじめる。
何事も完璧に仕事をこなす優秀な執事だが、いかんせん融通が利かない時がある。
養女の件で、多少は変われば――
と、グレイは考える。
だから、クローリアのもとへ行かせた。
メイドによって案内された部屋にいるクローリアは、落ち着きがなかった。
自分が暮らしている場所とは明らかに異なり、まさに絢爛豪華。
特に腰掛けているベッドのクッション性は高く、敷かれているシーツは肌触りがいい。
また掛け布団は羽のように軽く、この世の物とは思えない代物。