13年目のやさしい願い

「一ヶ谷と篠塚?」

「良かったな、思い出せて」



明兄、声が怖いって。



「間に合った?」

「ギリギリでセーフだな」

「ってかさ、一体何やるつもり?」



ハルに何もしないで欲しいって言われてたよな?



「何、ちょっと反省してもらうだけだ」



……反省って。

具体的に何をやるとか、締めてやるとか言わない分、逆にやばい方面の人っぽくて怖いし。



「叶太にも、陽菜に勘付かれない程度には動いてもらうから」

「了解」



ハルがあんな目に合わされたのには、オレもはらわた煮えくり返ってるんだ。

ハルが何もしないでって言うから、大人しくしてたけど。



「でも、オレ、ハルが嫌がるようなことはしないよ」

「分かってるよ。オレだって、そこまではしない」



心なしか、電話の向こうの明兄の声が優しく聞こえた。



「ちょっとケジメを付けさせてもらうだけだ」



前言撤回。

明兄の冷たい笑顔が目に浮かんだ。

やっぱり、明兄は相当怒っていて、やる気満々だ。
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