13年目のやさしい願い

3.3つの切り札


そして、日曜日。

オレは学校にほど近い駅前の和風ファミレスのイスに座っていた。



「で? いったい何の用? 衛(まもる)先輩のことって何なの?」



衛とは、篠塚先輩が片想いしていた、オレの2つ上の兄貴の名前だ。

席に着くやいなや、さっさと話せとばかりに篠塚先輩はまくし立てた。

本当に、何かにつけてせっかちな人だ。

とは言え、今回に限っては、篠塚先輩がいい加減痺れを切らすのも仕方ないのかもしれない。

何しろ兄貴を口実にして呼び出し、その後、メールに電話に、何度聞かれても、ひたすら詳しくは直接会って話したい……としか言っていないのだ。

と言っても、申し訳なくも、兄貴の話はただの呼び出す口実だから、何の話かと聞かれても答えることはできないんだ。

この後は、ひたすら先日の陽菜ちゃん襲撃事件の落とし前を付けるのだ。

そう落とし前……。

陽菜ちゃんの願いは、念押ししておいて欲しいというだけだった。

のに、落とし前。

随分と物騒な状態だ。

広瀬先輩曰く、「さっさとしないから、利息が付いたんだろ」とのこと。

電話一本で済む話をこうも大きくしてしまったのは、間違いなく自分だ。つまり、自業自得。

しかし、なんでオレが何もやっていないと分かったんだろう?

篠塚先輩に会っていないことは分かるかもしれないけど、電話で済ませたってのはありだろ?

……いや、問われて、何もしていないのを早々さらけ出したのは他ならぬオレか。

何より、篠塚先輩は悪巧みを続けていたわけだし……。
< 396 / 423 >

この作品をシェア

pagetop