13年目のやさしい願い
最初に行動したのは、兄貴だった。

そう、行動。

兄貴は、立ち上がり姿勢を正すと、90に腰を曲げ、静かに頭を下げた。




「弟と後輩が、本当に申し訳ないことをしました」




喉の奥から絞り出したような兄貴の声には、苦渋が滲み出していた。



今回のことで、陽菜ちゃんの身体が相当悪いことは分かった。

分かっていた……つもりだった。

陽菜ちゃんは優しいから、オレを責めるようなことは一言もいわなかった。

だから、多分、オレはどこかで、そこまで重大な何かをした訳じゃないと思っていたのだろう。

広瀬先輩からの話……陽菜ちゃんを想う恋人側の気持ちを聞くと、ぎゅっと胸が締め付けられるような不安を感じた。

多分、これは広瀬先輩の陽菜ちゃんを心配する気持ちだ。

陽菜ちゃんに何かあったらと思うと、居ても立っても居られないような、何かせずにはおれない気持ちだ。

あの日、急に具合を悪くした陽菜ちゃんを手慣れた様子で看病するのを見た。
広瀬先輩は冷静に、怖いくらいに冷静に、的確に動いていた。



……けど、心の奥底まで冷静な訳、ないだろ?



恋人が目の前で苦しんでいて、倒れて意識を失って。

不安に決まってる。
そりゃ、不安に決まってるさ。



オレも立ち上がり、兄貴に習って頭を下げた。
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