声を聞くたび、好きになる
『ウソなんかじゃない。幼なじみの距離を縮めたいって、ずっと思ってた。兄としてじゃなく、男としてミユのそばにいたいって……』
切なげにかすれた流星の声。私は夢を見ているみたいに感じた。
「流星!」
思い切って、私は言った。
「私も流星が好き……!ずっと、好きだったよ!」
やっと、言えた!
『ミユ……』
流星は驚いてるみたいだ。そうだよね。こうして本人に好きと言える日が来るなんて、私だってビックリしてる。
この告白が成功する。だって、両想いなのが分かっているから。
そう思っていたのに、流星は……。悲しみを我慢しているみたいに不自然な明るい声でこう言った。
『ミユは勘違いしてる』
「え……?」
『ミユは、男として俺を好きなわけじゃない。昔から見てたから分かる。ミユは俺の声が好きなだけだ。俺自身のことを好きなわけじゃないと思う』
「そんなっ!」
たしかに流星の声は大好きだ。でも、流星本人のことも大好き。
『俺がいきなり好きなんて言ったから、無理して合わせてくれたんだろ?悪かった』
「違う……!」
『ありがとな。しばらく仕事も忙しくなるし、どっちみちミユには会えない。寂しくなるけど、元気でな』
仕事なんて、言い訳だ。ううん、忙しいのは本当かもしれないけど……。一気に距離を置かれた。
好きだと伝え直す暇もなく、流星との会話は終わってしまった。電話越しに、切なさを残して……。