声を聞くたび、好きになる

 それから私は、何もできなくなってしまった。

 それまで欠かさず見ていたアニメを見忘れるどころか録画予約すらしなくなったし、オークション出品用のイラストも描けなくなった。

 お風呂に入ったりご飯を食べるという日常的な行動すら、忘れるようになった。


 流星がいなくなって、私の世界は色を失ったみたいに寂しく暗い景色に変わる。

 あんなに好きだったアニメ。見れば必ず流星の声を見つけてしまうから、見られなくなった。流星の存在を見つけたら、私は追いかけたくなってしまうから。


 長年幼なじみとして保ってきた距離を縮めたいのに、縮むどころか、取り返しのつかないくらい流星との距離は離れてしまった。

 どうしてこうなってしまったんだろう?

 流星は私のことを好きだと言ってくれた。でも、それすら幻だったような気がする。私にとって都合のいい妄想だったんじゃないか、って……。


 ――流星から合鍵を返されて四日後。私の暮らしを大きく変える出来事が起きた。









《2 縮めたい距離(終)》

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