声を聞くたび、好きになる
流星といい、芹澤さんといい、男の人の内面は理解に苦しむ。簡単に攻略できそうにない。同性のモモとはすんなり意志疎通できるのにな。
「難しいから落としがいがあるんだよ!なんてね」
モモはふざけたノリで私を納得させようとしている。
「とにかく、今ミユはモテ期まっただ中ってことで!楽しくやろうよっ」
「酔っぱらいモードレベル百行ってるね、君は」
「酔ってない酔ってない!まだまだ飲むよー!」
モモのペースに乗せられ、私はそれから10杯のカクテルを飲み干した。
べろんべろんになったモモとは正反対に、私はしっかり意識を保てている。
意外とお酒に強い体質だと分かったのが、少し嬉しかった。大人になれた、そんな気がして……。
それから、イラストレーターの仕事についてモモに訊かれたけど、「それは話せない」と返した。
これは、紙川出版との契約を結ぶ時に念を押された。たとえ身内でも、作品を発表するまでは仕事の内容を口外してはならない、と。
応援してくれているモモにすら仕事の詳細を話せないのは心苦しくもあったけど、決まり事なら仕方ない。
「内緒だからね」そう言って口を開くのは簡単だけど、万が一それで出版社に迷惑をかけることになったら、私は責任を取れない。
なにより、私を信用して仕事を任せてくれた芹澤さんや出版社の人達を裏切りたくなかったのだ。
まだ、仕事に着手していないけれど……。契約書に名前を書いた時に、私は紙川出版の名前を背負う覚悟をした。イラストレーターの一員として、良い仕事がしたい。そのために、防げるミスは自分の心がけで防ぎたい。
「なんかミユ、イラストレーターの契約を交わしてから顔つきが変わったね。イイ感じにしまってる」
「そうかな?自分では分からないけど、気分は引き締まってるかな」
今までは、好きな時間にイラストを描き、気ままに食事や睡眠を取るという生活をしてきた。どこで何をしても注意されないし、自分に甘くても全然問題なかった。
オークションに出品してるイラストも、月に何枚描く!なんて決めず、気のおもむくまま出品していた。たくさん描いてリッチな時もあれば、1枚しか出品しない月もあった。
今は、違う。
こうしてモモと楽しんでいても、心のどこかでイラストのことを考えている。
いつ作業に取りかかろうか。明日起きたらすぐに足りない画材を買いに行かなくては。参考になりそうな画集を買いに行きたい。そんなことを考えてしまう。