極彩色のクオーレ








赤色に照らされる三日月が山際に上がったところで、青年は河川に到着した。


広い岸にテントを張り、野宿の準備をする。


火を起こし、来る途中で仕留めた兎を捌き、熱した鉄板で焼く。


食事を終えた頃には、辺りはとっぷりと暮れていた。


片付けをして、青年は鞄から小さく折り畳まれた紙を取り出す。


それは数枚の設計図だった。


さっき出会った、狩猟家たちの話を思い出す。



「あの様子だと、あんまゴーレムだって気づかれてないようだな。


身近にいるやつならバレてても仕方ないと思ってたけど、さすがおれの造ったゴーレム」



満足げに頷いて、青年はそれをたき火に放り込んだ。


小さくなりかけていた橙の炎が絡み付き、紙を黒く燃やし、どんどん形を変えていく。





『目隠ししている刺繍屋の女の子と暮らしているんだってな』




男たちの中の誰かが言っていた言葉を思い出す。


その刺繍屋が、『彼』の新しい主なのだろう。



(あいつが選んだなら、おれよりずっといい性格の奴なんだろうな)



跡形もなくなった設計図から顔を逸らし、青年は寝転がって空を仰いだ。


星をまとった藍色の空。


街の中では、こんなにきれいには見えない。



「刺繍屋と一緒に、か……」



頭の後ろで手をくみ、青年は瞼を閉じてため息をついた。


ぼしゅ、とたき火が消え、夜の暗い青色が瞬く間に広がっていく。


もう一度目を開けて、さらに見えやすくなった空を睨んで青年は呟いた。




< 672 / 1,237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop