極彩色のクオーレ





けれども目覚めて最初に出会ったとある人形職人に、『嬉しい』心と『楽しい』心を教えてもらったので、少しだけ明るい気持ちになれるようになりました。


黒と白ばかりの世界に、わずかに色が取り戻されました。


もっと心を知ろうと、人形職人と別れた修理屋は旅に出ます。


その先で、刺繍屋の少女と出会いました。




真っ暗な世界を持っている自分と、色のない世界を持っている彼。



(この子、なんだか私に似ている……)



刺繍屋は彼といるときは孤独から逃げられていることに気づき、もっと一緒にいたいと感じます。


奇妙なひっかかりすら介入しない相手。


大きな安堵が彼女を包み込みました。


願いを聞き入れ、修理屋は刺繍屋の『家族』として暮らし始めました。


修理屋は新しい主と過ごし、街の人々と関わり、ときには危険な目にもあう中で、さまざまな『心』を覚えていきます。


彼の青い心臓は、明るく優しい色をいくつも宿しました。


もう、色のない世界に引きずり込まれることはありませんでした。


刺繍屋もまた、心を知って成長していく彼を通して変化します。


少しずつ少しずつ、踏みこまず踏みこませなかったところへ進むように、受け入れるようになります。


視界は相変わらず真っ暗だったけれど、彼女はそれを真っ暗だと感じなくなりました。


仲良しも増え、もともと仲良しだった者とはさらに絆が深まり、明るい心について考え直し、暖かな日々を過ごしていきました。




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