私の意地悪な旦那様


「ほんと、どれだけ人を心配させれば気が済むの?もしわざとやってんなら本気で怒るよ」



むっとした先輩に再び謝る。

けれども、心配、という言葉に気付いた私は先輩の方を真っ直ぐに向いた。


「バカ………」



そっと頬に手を伸ばし、痛いぐらいに何度もなぞる先輩。


「そんな隙だらけだから、あんなのに良いようにされるんだよ」


少し遠くで、パンッと大きく花火の音が鳴る。



でも、先輩からは目を離せなくて。

近づいてくる先輩の胸元をぎゅっと握って、目を瞑る。









その日私は初めて先輩と、キスをしたのだ。




< 272 / 330 >

この作品をシェア

pagetop