10円玉、消えた
そんな商店街の人々の勝手な噂をよそに、竜太郎は高校卒業の時をただひたすら待つことにした。
そして三年の一学期、竜太郎は担任の教師と進路についての面談をした際、ハッキリと“東京での就職”を希望。
教師の大学進学の薦めには断固拒否した。
会社員の道に進む気は到底無かったし、杉田から支給される金で大学生活を送るなど、そんなことは絶対にしたくなかったからだ。
竜太郎の大学進学を切望していた幸子は、もちろんこれには猛反対。
しかし竜太郎の決意は最早揺るぎないものとなっていた。
働きながら漫画家を目指す。
やはりその考え一本に絞られたのである。
だが、薫と一緒に東京へ行くという計画は崩れた。
彼女の両親が上京を意地でも許可しなかったためだ。
薫には大学進学で上京している三つ上の兄がおり、両親は娘だけは地元にいさせたかったのだろう。
「私、県内の短大を志望することにしたんだ。ごめんね、竜太郎」
と涙声で語る薫。
「残念だけど、仕方ないさ。でも卒業までできるだけたくさんデートしようぜ。あ、薫の勉強の邪魔にならない程度にだけど」
竜太郎は精一杯明るく振る舞う。
薫は大粒の涙を流しながら頷いた。
そして三年の一学期、竜太郎は担任の教師と進路についての面談をした際、ハッキリと“東京での就職”を希望。
教師の大学進学の薦めには断固拒否した。
会社員の道に進む気は到底無かったし、杉田から支給される金で大学生活を送るなど、そんなことは絶対にしたくなかったからだ。
竜太郎の大学進学を切望していた幸子は、もちろんこれには猛反対。
しかし竜太郎の決意は最早揺るぎないものとなっていた。
働きながら漫画家を目指す。
やはりその考え一本に絞られたのである。
だが、薫と一緒に東京へ行くという計画は崩れた。
彼女の両親が上京を意地でも許可しなかったためだ。
薫には大学進学で上京している三つ上の兄がおり、両親は娘だけは地元にいさせたかったのだろう。
「私、県内の短大を志望することにしたんだ。ごめんね、竜太郎」
と涙声で語る薫。
「残念だけど、仕方ないさ。でも卒業までできるだけたくさんデートしようぜ。あ、薫の勉強の邪魔にならない程度にだけど」
竜太郎は精一杯明るく振る舞う。
薫は大粒の涙を流しながら頷いた。