10円玉、消えた
昼12時を過ぎた頃、待望のラーメンが出来上がった。

「ほら、食ってみろ」

源太郎は幸子と竜太郎にラーメンを差し出す。
見かけは何の変哲もない、シンプルな醤油ラーメンである。

竜太郎は早速ツユを飲んだ。

美味い!

続けて麺を口に運ぶ。

うん、これぞまさに『らあめん堂』の味だ!

ふとそのとき、竜太郎の頭に突然ある光景が思い浮かんだ。



「竜太郎、見てろよ。父ちゃんの神業を」

「うん」

シャッ、シャッ、シャッ…

カチャカチャ…

「ほら、ラーメン一丁出来上がり~」

「わぁすごい、父ちゃん!」

「竜太郎、食べてみな」

「うん、いっただきま~っす!」

「熱いからな、よくフーフーするんだぞ」

「フーフーしないとどうなるの?」

「火傷しちゃうんだよ」

「やけど?」

「舌がな、こ~んな大きく腫れちゃってな、怪獣みたいになっちまうんだ」

「え~っ!」

「だからちゃんとフーフーしなきゃダメだぞ」

「うん」

フーフー、フーフー…

「もういい?父ちゃん」

「ああいいぞ」

ズルズルズル…

「うま~い!」

「どうだ、父ちゃんの腕は日本一なんだぞ」

「父ちゃんってすごいんだね」



< 185 / 205 >

この作品をシェア

pagetop