10円玉、消えた
「トシの差なんて関係ないよ。ほら“愛があれば”てよく言うじゃん。それに竜太郎のお母さん、男にモテそうだし」

「思い過ごしじゃないのか?」

「でもさっき二人を見てピンと来たんだ。私のカン、結構当たるんだよ」

竜太郎にとって当然気分のいい話ではない。
だが、そんなの認めたくないと思う反面、薫の確信したような表情は無視できなかった。

更に薫は言う。
「それに、竜太郎が気に入ってる人のこと、余り悪く言うのは気が進まないけど…杉田って人ホントに信用できる?」

「信用できるさ。カッちゃんがウチの店をあんなに繁盛させてくれたんだから」

「でもなんか悪巧みしてそうな雰囲気があるんだよね、あの人」

「またそれも“カン”か?」

薫は黙って頷く。

「それは絶対ハズレだって。俺毎日カッちゃんと顔合わせてんだぜ。悪いヤツだったらどっかで絶対ボロを出すだろ。カッちゃんには全然そんなとこない。タカさんみたいにスゴくいい人さ」

「自転車屋のタカさんて人はホントにいい人だと思うよ。でも杉田って人はタカさんに似たような感じなんだけど、ちょっと違うんだよなあ。うまく説明できないけど」


< 97 / 205 >

この作品をシェア

pagetop