戦乙女と紅~東方同盟の章~

獅子王

力をなくし、ぐったりとした乙女の髪を放す。

…乙女は首をうなだれ、ピクリともしなくなった。

死んだか?

いや、己の罪の意識に耐え切れなくなり、気を失ったらしい。

「フン」

俺は乙女を鼻で笑った。

当然の結果だ。

理想ばかり追いかけて現実を直視しなかった夢見る少女に、己のしでかしてきた罪を突きつけたのだ。

こうなるのは当たり前と言える。

だが、王を務める者は皆、この現実を見つめているのだ。

そしてその結果、甘っちょろい理想は捨てた。

一国の主とは、子供の読む童話の主人公とは違うのだ。

時には自国の民をも切り捨てる覚悟が必要なのだ。

敵も助ける、味方も守る。

そんな綺麗事を謳う小娘が俺と対等の立場にいるかと思うと吐き気がした。

「獅子王」

部屋の中を、見張りの兵が覗き込む。

「乙女はいかがなさいますか?また氷水を…」

「眠らせておけ」

俺は言った。

「これ以上責め立てて精神が崩壊しては元も子もない」

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