甘い唇は何を囁くか
第11章 「A darling person」
ギリシャ彫刻のように綺麗な人。

こんな美しい男の人を見たことはなかった。

きっと、私の生きてきた32年なんてこんな奇跡の前にしたら、何の意味もなさない。

あふれ出るフェロモンも、その銀色の髪に見たことのないような美麗な碧眼も、しびれるようなハスキーボイスも、長い足も、服を脱いだら以外にも筋肉隆々で、着やせするタイプなところも・・・。

普段はツンツンしてるくせに、やたら甘くて蕩けさせられるような台詞ばっかり言ってくるところも、上手なキスにやられた感マンサイだったのに、その指先の愛撫はもっともっと熟練の技で、もうどうにでもなってしまえってすぐに思わせられたところも・・・。

目の前でそんな長いまつげを震わせて、銀の雨粒みたいな涙をぽろぽろと零して、子供みたいに甘えた声で私に縋ってこられたら母性本能くすぐられまくりで、どうしようもなく愛しさを爆発させられたところも・・・。

何もかも全部全部、好き。

全部全部、愛してる。

こんなに、どうしようもないくらい男に参った事、これまで一度もなかった。

だけど、もうどうやっても抜けないぐらいのところまで深くめり込んでシスカが刺さっている。

だから、この気持ちは揺るがない。

何を言われても。

何を聞いてもーーーーー。

「俺はヴァンパイアだ」

・・・

あ、ちょっとしたデジャヴ。

そういえば、宗眞もそんなバカみたいな冗談言ってなかった?

そうそう、歳だ。

歳を聞いたときに、何か、何歳って言ってたっけ、そうそう240?確か、そんな数字を言っていたような。

けど、ふさがれた唇から入り込んできたシスカと絡めている間、双眸に映るシスカは、ずっと目蓋を閉じていて・・・その目じりからは、幾粒もの涙の滴がこぼれていく。

嘘・・・だよね?

冗談・・・だよね・・・?

そんなこと、あるわけないもん。

ヴァンパイア・・・?って、つまり吸血鬼のことだよね?

人間にかみついて血を飲むあれだよね?

こうもりになったり、お城に住んでたりするあれだよね?

(お前はどうせ信じない)

シスカが前置いた言葉が脳裏をよぎって、ズキンと胸が痛んだ。

そっと、唇が離れていく。

そして、シスカは目蓋を開いた。

あ・・・

遼子はふたたび痛んだ胸に、気付いた。

慌てて、言った。

「信じるよ!」
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