甘い唇は何を囁くか
日本の平穏さが懐かしく感じる。

高校生の頃の私なら不良といわず、男の人だってだけで怖がったかもしれないけれど、
大人になって酸いも甘いも知った今となっては怖いものは少ない。

絶叫系も喜んで乗れるし、お酒だってぐいぐいイケる。

花火を見て綺麗と言うよりも、手元のビールの味の方が気になってるし、
男の人の前でもナヨナヨなんかできっこない。

むしろ、そんな小娘を見るとイラとかしてしまう。

そういう女らしくないのが、男の人としては嫌なんだってことは分かってる。

けど、今なら…男の人が望む女になれそう。

目の前には、店の中で絡んできた男たちがいる。

店から、ホテルまでは数分の距離だけど、まさか待ち伏せしているとは思ってもいなかった。

その馬鹿でかいガタイで壁みたいに立ちふさがれて、男たちは下品な笑みを浮かべて言う。

「お嬢ちゃん、今夜相手になってくれない?」

「冗談言わないでよ、誰があんたなんかと。」

「お、しゃべれるんじゃん!」

ってまた、品のない笑みを返す。

映画やドラマだと、ここらあたりで救世主的にカッコいい男の人が現れるけど、
現実はそう甘くない。

強い力で腕を引っ張られて、路地裏に連れて行かれそうになる。

誰か助けて、と声を上げる前に口までふさがれた。

どうしよう…。

絶体絶命の大ピンチ…!!
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