甘い唇は何を囁くか
「お前のようなジャパニーズの子供が、そんな姿でこんな夜半にひとりでうろうろしていれば、今のようなことがあっても当然のことだ。気の毒なのは、お前のような子供に不覚にもアてられてしまったあの男たちの方だ。」

・・・はぁ?

どういう理屈なわけ?

「親も親だ。いくら、ここが開放的になる国柄だといっても、お前のような子供を―。」

「ちょっと、ちょっと待って。」

この人は、一体遼子を何歳だと思っているのか―。

「何を勘違いしているのかしれませんが、私は子供じゃありません。それとも何?ここじゃ35歳以下はみんな子供なわけですか?あなたも相当お若く見えますけど?それに、襲ってきた男たちの方が不幸だなんて言葉はありえませんから!あなた、どうかしてるんじゃありません?」

遼子は腰に手をすえて、一気にまくしたてるように言い切った。

幾ら、美形でも言って良いことと悪いことがある。

それは全国共通確かなことのはず。

男は呆然としている。

まさか、遼子がここまで言うとは思ってもいなかったのだろう。

何なのよ、本当に―。

ちょっとカッコいいしこんなシチュエーションめったにお目にかかれるものじゃないから、これは新たな恋の予感かしらと胸を弾ましたりしたのが、馬鹿みたいじゃないー。

ふいに寄せられた風の冷たさに、冷静さを取り戻す。

それと同時にたまらなく寒くなってきた。

ぶるりと肩を震わせて、目の前で未だ呆然となっている男を見遣りふいっと顔を背けた。

「どうも、ありがとうございました!人として、お礼だけは言っとくわ。」

もうっ、早くホテルに帰ってシャワー浴びよう。
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