甘い唇は何を囁くか
第10章「本当の気持ち」
シスカはうな垂れて酒を煽った。

こんなものを呑んでも旨いとも感じず、酔うこともできないのは分かっている。

ただ、自分の意識を逸らす為だけに強めのウォッカを喉に注ぐ。

人間の女を愛する時が来る・・・?

そんな馬鹿なと、頭の中で否定する。

人間は、ただの食物。

そうだ、そのとおり。

それ以上の答えはない。

もし、まんがいちあったとしても、知らない方が良い。

知る必要はない、と・・・身体のどこかから声がする。

バンジェスが言った言葉が、これほど思い出されるのは、あの女が自分を拒んだせいだ。

あんなことは、これまで一度もなかった。

だから―、少し興味がわいただけだ。

それ以上でもそれ以下でもない。

だったら、拒まれようが何だろうが関係ない。

ヴァンパイアの血が求めている贄をただ、本能のままに奪いに行けば良いだけだ。

シスカは熱い息を漏らして、額を摩った。

―苦しいのだ。

胸が締め付けられ、喉が焼け、頭の中はあの女のことで一杯だ。

こんなに欲しいのは、きっとあの女が異質だから。

それだけだ。

あんな女、死のうがどうなろうが関係ない。

ただ、一度だけ…一度だけ欲しい。

もう・・・。

シスカはガタンと椅子を鳴らし立ち上がると、牙を見せて呟いた。

「もう、・・・我慢・・・できない・・・。」







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