甘美な蜜のプワゾン
「蘭ちゃん、今のでバレただろうし俺は先に行く。蘭ちゃんは俺が出てから10分後にここから出て。いいね?」

「は、はい」

頷いて返事をする蘭を見た太郎は、優しい笑みを向けると頭を一撫でしてから、しなやかに遊歩道へと飛んだ。

その直後、カーブの陰から右京が姿を表した。

(ヤバッ)

蘭は慌てて薔薇の陰に隠れた。

「なんだ、やっぱりいるんじゃないか。いるなら何で返事しない。電話に出ない」

不機嫌そのものの口調で問い詰める右京に、太郎はすました顔でスマホをブレザーから出すと音を消した。

「んー……まあ、ちょっとボーッとしてたっつうか。そう、怒んなよ」

「怒ってるわけじゃない。心配したんだ。お前がここにいる時はたいてい――」

「大丈夫だって、右京は心配し過ぎだっつうの。もう帰れるんだろ?」

「……あぁ」

「んじゃ、帰るか」

2人の気配が遠ざかるのを感じた蘭は、こっそりと顔を出した。

10分後と太郎は言っていた。
蘭は用心のため、暫く身を潜めて時間を待った。
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