甘美な蜜のプワゾン
「って、ごめんね? 別に馬鹿にしたわけじゃないから。ただ、素直にそう感じただけ」

ふわりと柔らかく笑えば、それだけでフェロモンが振り撒かれる。

「いえ、気にしてませんから……」

蘭は首を振る。

別なところでは気になるものがあったが、所詮この少年とも今後関わる事がないのだ。

どう見ても同学年ではないし、蘭とは無縁の男だからと、湧いた疑問を払い除けた。

「太郎」

不意に背後から掛かる声に、蘭と少年は同時に声の主を見た。

銀のフレームがキラリと光る。

知的そう、悪く言えば神経質そうな男子生徒が、どこか咎めるような視線を眼鏡越しに少年を見据えていた。

「おう、右京」

反してフェロモン少年は柔和に笑みを浮かべ、ベンチから腰を上げた。

「『おう、右京』じゃない。いつまでも帰って来ないから来てみれば……」

と、少年の乱れた制服に眉を寄せ、そしてその冷たい眼差しを蘭へと向けてきた。
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