ヴァンタン・二十歳の誕生日
 それでも何とかなるものだ。
私は、此処が鏡の中だと言うことを忘れていただけだったのだ。


どうにか辿り着いた操舵室。

小さな覗き穴から見ると、其処には確かに誰かが居る気配がした。


(きっとパパだ!)

逸る気持ちを落ち着ける為に背中で眠っているチビを背負い直した。




 パパはやはり操舵室に閉じ込められていた。

驚いた事に傍にはキャプテンバッドと思われる骸骨があった。


(ん? と言う事はパパも……骸骨?)

私は自分の考えが怖くなり、恐る恐るパパに近付いた。


足カセをさせられたパパは、椅子に腰を降ろしたままで操縦させられていた。




 キャプテンバッドは動かなかった。


(―当たり前だよなー。骸骨が動いたら、怖すぎる)

それでも私はそっとパパに近付いた。




 そして遂にパパの足に取りすがった。


「パパ!」
小さな声で……

それでも精一杯の大きな声で……


「パパ!」
今度はもう少し大きな声を出した。


私が誰だか解らないといけないので、ポニーテールにさっき飾ったリボンを見せた。


振り向いたパパの顔が泣いていた……


「パパ!」
私はもう一度、今度は脇腹から抱き付いた。




 何時もチビのしていたリボンを見て、私だと気付いてくれて……


「やっぱり助けに来てくれたのか……」
感慨深気に言ったパパ。

私はただ頷いた。


(やっぱりと言った……。この冒険は仕組まれていたのか?)




 母から携帯を受け取って二階に行く途中 ……

思い出しかけた数々の出来事。


そしてベッドでポニーテールを見た時、このリボンで何かを感じた。


(全てはパパとの再会のためだった……)

私は改めて、パパを見つめた。




 「パパ、あれは本物の魔法の鏡だったようね」

私が言うとパパは頷いた。


「だから言ったろ」
パパは自慢気だった。


「でもだから、こんな目にあった」
パパは足かせをに目をやった。


「其処の骸骨誰だと思う。何とあの有名な大海賊キャプテンバッド様なんだ」

こんな目にあったと言いながらも、パパは自慢気だった。

私は思わず笑っていた。


パパは少しふてくされたように私を見た。


「だってパパ、なんだか嬉しそうなんだもん」

私はもう一度パパの腰にすがりついた。




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