ヴァンタン・二十歳の誕生日
 「その前に屋根裏部屋に置いて無かった?」

それを聞いて、そんな事実を私は思い出した。


「パパが行方不明になった日、確かに屋根裏部屋にあったよ」
私の言葉を聞いてパパは思わず頷いた。


「そうか……あの日、その鏡から反射した満月の光がきっと魔法の鏡に入ったんだ。だからキャプテンバッドは此処に居るのか」


「キャプテンバッドと満月にどんな関係があるの? ねえパパ教えて。だって今日満月だよ」


「えっ!? 満月?」

パパは私の一言でかなり落ち込んでいた。


満月とキャプテンバッドの骸骨。

この似ても似つかない取り合わせが、これから私達を襲う事になろうとは……

予想だにしない展開が目の前に迫っていた。




 チビが合わせ鏡を手にしていた。
小さな手がその合わせ鏡を一つにしようとした時、鏡を介した満月の光がキャプテンバッドに当たった。


「満月の光が……」
パパが青ざめた。


「又キャプテンバッドが甦る!」

パパの悲鳴が船内にこだました。




 バスルームのコーナーラックの鏡に写ったクロスペンダント。

全ては其処から始まった。


それがコラボして、屋根裏部屋を開けさせたのだ。


(そうだきっとパパの存在に気付かせるために。私を鏡の世界へ引きずり込もうとするために)

全ては私をこの船に誘うためのものだった。

パパを助けるために、私が此処に戻ることを知っていたのだろう。


そして……
パパを鏡の世界に閉じ込めたように、私とチビを此処へ閉じ込めるようとしている。




 パパが見つけた魔法の鏡は、本物だった。

でもお伽話の物とは違っていた。

写し込んだ人物に執着し、鏡の中に取り込もうする邪悪な鏡だった。


その人物……

それは紛れもなくチビ……

いいえ、私だった!




 お伽話に出てくる魔法の鏡を見つけたパパ。

でもそれは月の光によって魔力化されていた。


パパが鏡を抱えて帰って来た日は満月だった。

その日。
港に客船を見回りに行ったパパは海賊に襲われた。


満月の力で、中に閉じ込められていた海賊船が港に現れたのだ。


「満月に……満月に又、あの骸骨が甦る!」


「満月!? パパ満月に何があるの?」
私はパパに迫っていた。


「お姉さん。パパを虐め無いで」
今度はチビが私に迫っていた。




< 30 / 52 >

この作品をシェア

pagetop