ヴァンタン・二十歳の誕生日
聖女誕生
 私は覚悟を決めた。

此処から逃れて又家族一緒に生活する為に、武器になる物を目で探した。

魔力によって又蘇ってきそうだけど、骸骨を壊す位だったら棍棒でも良い筈だと思った。


幸い?
サーベルや太刀は此処へたどり着くまでに沢山あるのは確認していた。


それにしてもあれは不思議な光景だった。

ごく普通のクルーズ船に、大量の武器など必要ない筈なのに……


私はこれが何を意味しているのかをまだ知らずにいた。




 屋根裏部屋のトップライトからの月の光が、徐々に魔法の鏡を照らし出していた。

当たり前の事だけど、私は鏡をそのままにしていた。

そうしないと、戻れる事が出来なくなるからだった。


でもその日は満月だった。

偶然か……
必然か……

いやきっと初めから仕組まれていたのだった。


満月で変化する狼男。
そのとてつもないバイタリティ。

それはまさに魔の仕業だと言っても過言ではない。

そんな月の力が魔法の鏡を支配しようとしていた。


月の光……

満月の光には……

とてつもないパワーが秘められてはいたのだった。


私達は増幅されたムーンライトのビームによって、鏡の中に閉じ込められかけていたのだった。


それは悪魔に魂を売った、魔法の鏡の作者の執念だった。


お伽話に出てくる魔法の鏡ではなかった。


同じ作者の作品……

いわば姉妹と言わざるべき鏡だったのだ。


チビと私、異姉妹に相応しい収監場。


この鏡の世界に閉じ込める事で、地獄絵巻を完成させようとしていたのだった。


かつてその魔力でパパを閉じ込めた時のように。



 そして遂に……

魔法の鏡に亀裂が入り、徐々に広がる。

まさにムーンライトビームのパワーだった。


それは月の光を更に増幅させる。
そう、まるでプリズムのように……


その時。
合わせ鏡がコラボした。

満月の光が三角形の頂点を表すかのように、魔法の鏡を操舵室の窓ガラスに映し出したのだった。


「ゲッ!?」
パパがイヤな音を出した。


「何パパ?」
私はパパを見詰めた。

パパは操舵室の窓を指差していた。


「鏡が……魔法の鏡がヒビ割れてる……」
驚きの声を上げた私。
訳が解らずボーっとしていた。


「帰る場所がなくなる!」

私はパパの一言で、やっと事の重大性に気が付いた。

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