MOONLIGHT【番外編~ウエディング、新婚旅行!?編】
⑦目には目を…(驚愕の、将サイド)
話しは随分とぶけど――――
今は、日本へ帰る飛行機の中。
結局、あの映画祭の外国部門優秀賞を獲った作品は、オリバー監督の映画だった。
確かにとても優れていて、見ごたえのあるものだったから、やはりな、と納得した。
それに、ウィリスの演技は素直に素晴らしかったと思う。
嫌な奴でも、そう心から思えるようになったのは、何と言ってもレイのお陰だ。
あの時、きちんと向き合ってオリバー監督の映画を観てよかった。
そう思いながら、舞台に立つオリバー監督と映画出演メンバーに心から拍手を送った。
そして、外国部門は終わり、メインの映画祭最優秀賞の発表に移るはずだったのだが。
急にアナウンスが入った。
ざわめく場内。
訳がわからなくて、レイを見る。
さっきまでタバコを吸えない事に苛立ち、俺がミントガムを渡すたびに舌打ちをしていたレイが、呆然としていて。
よく見ると、体が震えている。
何があったか、わからないが震えている愛する妻をほおっておけるわけがない。
「レイ?」
そう声をかけ、肩を抱き寄せようとした。
だけど、その瞬間。
スポットライトが。
俺を照らした―――――
え?
何だ?
スポットライトを浴びた俺に、会場中の視線が集まり、拍手がおこった。
俺ばかりか、木村さんまで驚いて、レイに何?何?と聞いている。
はっ、と我に返ったレイが、泣きそうな顔で俺を見た。
そして。
「規定にはないけど、今回特別に…審査員全員の意見で、外国部門優秀演技賞に…瀬野将がえらばれた、って…。」
レイの言葉が、何を意味しているのかわからないくらい、一瞬、頭の中が真っ白になった。
「将!舞台へよばれている!!レイちゃんも行って!!」
木村さんが叫ぶように言った。
いつも余裕のある話し方をする木村さんが、こんな風に大きな声を出すなんて、よほどの事だな。
なんて、木村さんの慌てぶりを見て、俺は何故か急に冷静になった。
そして、レイの手を取った。
「レイ。ちゃんと俺のサポート頼むぞ?」
そう言って、立ち上がりにこやかに三方向に軽くお辞儀をした。
レイの手をそのまま俺の腕に絡め、歩き出す。
だけど。
「あっ、ちょっと待って。将…。」
さすがのレイもテンパっているらしく、ミュールが脱げて慌ててしゃがみこんだ。
クスリ、と笑い、舞台の司会者へ向かってジェスチャーで少し待ってくれと意思を伝える。
司会者が、おどけた様子で、ウィ、と返事をする。
周りからは温かな笑い声が聞こえた。
「レイ、大丈夫か?」
少し手間取っているように思えて、声をかけた。
でも、心配には及ばずレイがすくっと立ち上がった。
「お待たせ。行こう。」
そう言ったレイは、もう落着きを取り戻していた。
舞台の上は、外国部門優秀賞のメンツがまだ残っていた。
あ、そう言えば、表彰自体まだだった…。
インタビューが終わっただけだったな。
げ、てことは…またウィリスと間近で顔をあわせるのか。
てゆうか、レイ大丈夫か?
さすがに、マジギレして、さっきはヤバかったしな…あんな、レイ見たことないし…。
てことは…俺がマジに怒らせたらあんな…地獄を見るのか…うう…怒らせないようにしよう。
あー、胃の調子が悪いって言うのも機嫌が悪い理由なんだよな…どうも胃炎もちらしくて、ストレスがかかると、途端に胃痛が出て大変な状態になるらしい…葉山さん情報だけど。