時わたりatラブ(仮)
だが、平穏はあっという間に過ぎる。
恐ろしいほどに早く、戦が始まってしまったのだ。
ら「ふぅ…」
季節はずれの汗を拭い、荷物を運び出す。
「らんさん!備品の確認お願いします!」
ら「了解!」
ため息をついている暇もないほどに慌ただしく、最終決戦が始まりそうなせいでこの三日間隊士全員にぴりぴりとした緊張感が漂っている。
もちろん、私も例外じゃないけどどこか慌ててないのは戦に出ないからなのかな。
土「これを最終決戦にするぞ!!気ィ引き締めてけ!」
「「おおおおおおっ!!」」
高杉さんたち長州が反乱を起こし、私が新撰組に復帰してから約1ヶ月経った春の終わる頃、最終決戦が起きた。
幕府軍は残り少ない残党を倒すために多くの兵を新潟の地に送り、新撰組が屯所としている場所に会津兵も加わる事となる。
そして土佐と薩摩は幕府側と長州側に分かれ、藩内で2つの勢力がぶつかり合った。
土「らん!伝令頼む!」
ら「はい!」
永「おっしゃあ!行くぞ!死ぬんじゃねぇぞ!」
「うおおおっ!」
だけど、仲間たちが戦いに出て行く中、私は何も出来なかった。
伝令とか手当とか弾薬の調達とか大切なのは分かるけど何より、
土「行ってくる。」
ら「うん。負けるな!」
毎日戦に出て行く人を見送る事が辛くて、只々歯痒くて今まで感じた事のないような悔しさがのしかかってくる。
近「らん、いまの戦況をどう思う?」
ら「戦況ですか?」
新撰組が新潟で屯所としている高台からその麓で勃発している戦の戦況はよく見える。
ら「人数はこちらの明らかな優勢ですけど、奇兵隊は最新の銃を持っているし…」
近「最近は幕府側も銃の調練をしてたりするが…。この戦いざとなったら俺も戦いに出なくてはな。」
ら「ダメですよ!大将は最後まで出ないものです。そうなる前に私が行きますから。」
近「頼もしいもんだな。」
ハハッと笑うお父さんだって、疲労困憊の所為なのか少しやつれている。
切なそうな表情を見て私も胸の中がきりりと痛んだ。