よりみち喫茶
序 始まりの記憶
フラフラと歩いていた。
本当に、ただあてもなくフラフラと。
たまにこんなふうに、何もかも忘れてどこまでも歩いて行きたくなる時がある。
目的地なんて特にない。
ただ気の済むまで歩き続けるのだ。
そんな時、ふと現れた路地になぜだかとても心惹かれた。
心の赴くままに、一歩足を踏み入れてみると、大通りの喧騒が一気に後ろに遠のいた。
ふらりふらりと足を踏み入れて、どこまでもひたすら奥に向かって進んでいく。
そんなわたしの前に、突然“それ”は現れた。
「……素敵」
思わずこぼれ落ちるため息。
路地の突き当りにあったのは、とても長い間そこに建っていたかのような風格を感じさせる建物で、古くてボロボロなんだけれど、そこに何とも言えない趣を感じた。
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