甘い恋飯は残業後に


「点数も何も、彼女は俺の部下ですし」

「はぁっ、部下?! でも上司だからって部下に全く下心を持たないって訳じゃないだろーが。何だよ、俺と同い年だからって生意気に……っ」

一触即発の状態に、場の空気はすっかり凍りついている。兄貴が「まあまあ先輩、飲みましょう飲みましょう」と宥めると原田先輩も矛を収めたようで、兄貴に注がれたワインを喉に流している。


「そういやさぁ。難波って大学時代、付き合ってた女の子に『ヘタクソなのが耐えられない』って言われてフラれたんだったよなぁ! しかも、二回も!」

やっぱり気持ちは収まらなかったのか、先輩は笑いながらも悪意たっぷりに話し出した。周りで聞いていた人達もそれを初めて耳にした人が多いのか、にわかに盛り上がりを見せている。


「二回も言われるって、お前どんだけヘタクソなんだよ!」

ゲスな笑い声が、店内に響き渡った。


だめだ――もう、限界。


「ちょっと酔ったみたいだから、風に当たってくる」

わたしは先輩にではなく叔父さんにそう言って立ち上がる。原田先輩が何やら後ろからわたしに言っていたようだけど、それを耳に入れないようにして店を出た。


< 115 / 305 >

この作品をシェア

pagetop