甘い恋飯は残業後に


一方の加藤シェフはどうかというと、彼は三浦係長に弱みを握られ脅されていた。

その弱みとは、店の食材を勝手に持ち帰っていたこと。


『Caro』もオープン当初はなかなか日々の客数が読めず、日によっては残った食材が相当量出ていた。加藤シェフは食材を廃棄するのがどうにも勿体ないと、軽い気持ちで自分の母親が入居している介護施設にそれを無償で提供した。

そのことで施設側から大層感謝され、母親も今までと比べ物にならないぐらいの好待遇になった。すっかり味を占めた彼はわざと食材が残るように調理して、ずっと施設側に食材の提供を続けていたということだ。

会社にそのことをばらす、と脅されていた加藤シェフは、三浦係長に指示されるまま『美食ログ』だけではなくあちこちの口コミサイトに『Caro』の中傷文を書いていたらしい。



「自分が作ったものを酷評するって、どういう気持ちなんですかね」

ひとしきり、社食の片隅で今回の事件について話した後、水上ちゃんが箸を止めてそう言った。


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