甘い恋飯は残業後に
「ちょっと万椰(まや)さん、聞きましたよー!」
わたしがオフィスに入ったと同時に、後輩の水上 綾乃(みずかみ あやの)が大声を上げながらこちらに飛んできた。
「ちょっ……なに、どうしたの」
「昨日、リテール部の山西さんから告られたらしいじゃないですかー!」
彼女はそう言って目を輝かせている。わたしはまた昨日の出来事を思い出して、苦い感情が胸に広がった。
「水上ちゃんが、なんでそれを知ってるの?!」
確かに昨日、あの場に人はいたけど、彼女と繋がりがありそうな人はいなかったように見えたけど……。
「私の情報網を侮らないで下さいよ。断ったことだって、知ってるんですからね!」
得意げに言う水上ちゃんを見て、わたしは苦笑する。
「今年になってから、もう三人目じゃないですか」
「……そう、だっけ?」
「そうですよ。いいなぁ、羨ましい」