薬指の約束は社内秘で
第8章 初恋の彼に触れた日


夢を見た――

夢の中で私は髪を一つにまとめて、リクルートスーツを着ている。
隣には同じように真新しいスーツに身を包む背の高い男の人がいた。


白い肌に薄らと浮かぶ片えくぼ。私を見つめる柔らかい瞳に、これが夢ではなく現実にあった出来事だとやっと気づく。

あぁ。そうだこれは、瑞樹と再会したあのときの――


会社のロビーで定期を拾ってもらったことが縁で、彼と何度か会うようになった。
就活情報を交換したカフェでの帰り、瑞樹に突然こんな話を振られた。


『愛ちゃんってもしかして、静岡の高良町の出身じゃない?』

『えっ。どうして知ってるんですか?』

『ハンカチに名前があったから…』

『ハンカチ?』
< 298 / 432 >

この作品をシェア

pagetop