薬指の約束は社内秘で
テーブルに片肘をついて柔らかく笑う瑞樹に、二人も少し照れた様子で「おうっ」と言い合いながら互いに距離を取った。

すごい。私だったらこんなにスムーズにいかないのに。
そういえば。付き合っていた頃に一度連れて来た時も、こんなことがあったっけ。

暴れる野獣を一瞬で手懐けた瑞樹に、やっぱりすごいなぁと感心していると、椅子から立ち上がった彼が私のそばに歩み寄り、そっと耳打ちしてきた。

「少し話せるかな?」

ひそめた声に、「えっ」と振り返ったら、「大事な話があるんだ」と声が重なる。
それまでとは違う真剣な瞳に、ドクンッと胸が震えた次の瞬間。

「大事な話ぃ!?」と声を裏返したのは私――ではなくて。

「えぇっ! それって、やっぱ、アレっすか!? お父さん娘さんを僕にくださいってやつっすよね!?」
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