薬指の約束は社内秘で
早く伝えたいのに喉の奥を震えて声にならない。涙が止まらない。

葛城さんがここに来たのは、奇跡なんかじゃなかった。
ここで会えたら、運命だって思った。

でも、神様がくれた奇跡より、彼の意志で叶えられたことが嬉しい。
それが——なによりも嬉しい。

穏やかな沈黙が流れていく。
心を落ち着かせてから顔を引き上げる。

「あの日も、今日も一緒にいてくれて、ありがとう……ございます」

20年分の想いをあの頃と同じ優しい眼差しまで届けると、葛城さんはそれに応えるように抱きしめてくれた。


温かい腕に包まれるとダメだって思うのに、もっと泣きたくなってしまう。
葛城さんのことを諦めないといけないのに、どこか期待してしまうバカな自分がいる。
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