薬指の約束は社内秘で
「今日の誕生日は、藤川が教えてくれた。だからどうしても、この場所で言いたかった」


胸が強く突かれる言葉が耳朶に触れて、止まったはずの涙がまた一筋伝い落ちていく。


名前も聞けずに別れたことを、ずっと後悔していた。
あの日の出会いがなかったら、私はもっと、泣き虫だったから。

だから、あのとき言えなかった、『一緒にいてくれて、ありがとう』という言葉をずっと言いたくて。

この場所に来るのが、なんとなく日課になって、でも会えなくて。
もう一度会いたいって、願っているのは私だけだと思っていたのに。

泣きじゃくる私の髪を柔らかく撫でる手つきに、鼓膜まで響く優しい声に、言いようのない想いで目の奥が熱くなる。
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