薬指の約束は社内秘で
彼との繋がりが分かって、気持ちはより高まってしまった。

葛城さんを忘れるためには、あの日出会った男の子が彼だと知らない方がよかったのかもしれないし。いま二人でこうしていること自体、愛美に対する裏切りだとも思う。

いまにも泣きそうな瞳で訴えた愛美の言葉が脳裏を過る。


『彼とっ、距離を取ってほしい』

彼女らしくない弱々しい声が鼓膜から響き聞こえる。


ちょっと待って。あれって、どういう――

心の呟きにドクンッと胸が震える。

頭の隅にぼんやり浮かんだ影のようなものに、絡み合う指先にギュッと力を加えると、思わず涙腺を緩ませる優しい声が鼓膜に流れ込んできた。


「嘘は誰かを傷つけたり、陥れたりすることもあるけど。あのとき藤川がついてくれた嘘は。俺にとっては、すごく必要なものだった……」

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