薬指の約束は社内秘で
6月の強い紫外線が照りつける真昼間。
妄想で瞳をうっとりさせている後輩の目を覚ましてやった。

「ちょっと、美希ちゃん。いまのはナイ。そんなっ、そんなことしてないって!」

「えー、そうなんですかぁー。でも抱き合ったんですよね? だったら、流れでチャチャッとやっちゃわなかったんですかぁ」

「チャチャッって」


これは、相談する相手を間違えた?

声を弾ませる美希ちゃんに深くため息をついた。

課長の再送別会を課長宅で執り行ったその日。お祭りから旅館に帰った私と葛城さんは触れ合った。

そう、そこまでは正しい。4回名前を呼ばれて、1回首筋にキスされた。

いや、それも少し違う。

正確には、酔ってうなだれた葛城さんの顔が『偶然』私の首にぶつかった。
それがあの夜、私と葛城さんとの間に起きた出来事すべてだ。
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