声の届く距離にいてください。




「少し口が過ぎたな、おい三津屋定食とやらをくれ」

「あ、はい!少々おまちください」


その男は当店自慢の三津屋定食を頼むと、視線をそらしお茶をすすった




「久米さん、三津屋定食入りまーす」

「はぁい」


この三津屋では、基本料理は久米さんがする。が、定食に付いている壬生菜のおひたしだけは私が作らせてもらえるのだ

「よし!」


気合をいれて台所に向かった








「お待たせしました、三津屋定食です」


「ああ、ありがとう。いただきます」


男は早速パクリと、小夜の作った壬生菜のおひたしに手を付けた

すると、表情が僅かに曇った



「……っ」

「ご、ごめんなさい。お口に合いませんでしたか?」


しまった、とお膳の上の器を下げようとしたら…


パシっ


「ふぇ?」

「下げるな」


手首を男に掴まれて、そう発せられた






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