身代わり王子にご用心







「騙し討ちみたいに連れてきてごめんね。でも、これが無事に終われば、役割はほぼ終わったと思って」


桂木さんの話によれば、今日のパーティーでは彼のパートナーに藤沢さんが。そして、高宮さんのパートナーは私が演じるそうだ。


富士美さんの“女優になれ”発言が、このためだったと痛感しましたよ……。


「それで、一番のポイントだけど。藤沢さんに僕の恋人役をやってもらうのは違いないけれど、将来を誓った仲という設定にして欲しいんだ。なぜかと言えば、下手すると明日にも結納させられそうだからね」

「えっ……」


聞き捨てならない提案をする桂木さんを見遣ると、彼は申し訳なさそうに眉を下げ微笑む。


「実は、僕は今まで葛城家の者だって公表されてなかったんだ。兄が3人いたから後継者の心配はなかったし。
けど、ね。兄たちは皆女の子しか産まれてなかったり、子どもに恵まれてないんだ。
一番近い兄ももう40過ぎだし……僕にさっさと結婚して子ども……後継者を得ろって訳なんだ」

「何それ! すっごい時代遅れもいいとこなんですけど」


藤沢さんも初めて聞いた話なのか、かなり怒っている。


「今どき男でないと後継者にしないって! 男女差別だしオカシイ!! それに、女の子が産まれてるなら婿養子だってあるし。何なら代々創業家が継ぐ役職を外部から迎えてもいいでしょう。世界的に見てもおかしいし、何もかも古すぎ!!」


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