身代わり王子にご用心



コンコン、と指でドアを軽く叩く。案の定返事がないから、仕方なくドアを開けた。


本当は……顔を合わせたくないのに。




創業記念パーティーのあった日、私は彼に嘘つき呼ばわりされた上に軽蔑された。


ただ、葛城の関係者と話してただけなのに。


……どうして。


どうしてあなたは、私を嘘つきと言うの? 私があなたにいつ嘘を着いたと言うんだろう。


おまけに、私は桂木さんが好きだと。彼がダメだったら別の男に乗り換える女だと非難された。


何一つ、真実じゃない。そんなのは誤解だと涙混じりで訴えたのに、彼は私を嘘つき呼ばわりするのを止めてくれなかった。


(私が一体何をしたと言うの?)


あの日のことを思い出すと、悲しくて涙が出そうになる。でも今は、ただの同居人なんだから義務は果たさないと。


掴んだままのドアノブを思い切って捻り、ゆっくりとドアを開いた。


「……あれ?」


黒をベースにした部屋には珍しく、白熱灯の光が一部を照らしている。見れば、高宮さんがテーブルに突っ伏して寝息を立てていた。


いつもは照明を完全に落として眠るのに珍しい。そう思いながら近づいて、テーブルの上に載っているものを見つけた。


……ゲーム機。


それも、十年以上も前に生産が終わり、メーカーでさえ修理等のアフターサービスを打ち切った古い機種だった。


裏蓋を外されたそれは修理の途中なのか、一部の基盤やケーブル等の部品が見えてた。


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