身代わり王子にご用心







「もしかして、桃花ちゃんが病気をして1週間休んだのって……」

「はい。閉じ込められて寒さにさらされたので、急性の気管支炎にかかってしまいました。高宮さんが足をケガするほど頑張って助け出してくれなければ、たぶん肺炎になっていたと思います」。


坂上さんが初めて聞いたかのように驚いて訊ねてきたから、もはや隠すまいと正直に話す。


きっと受け入れられない人もいるだろう、と思ったけど。私は間髪を入れずに続けた。


「私が病気になったのは別にいいんです。だけど、高宮さんまで巻き込んだ事は許せません。
どんな目的があったにせよ、早く自分の非を認めて彼に謝罪をしてください」

「は、バカバカしいったら!」


大谷さんが肩を竦めて呆れたように両手を広げた。


「こんな被害妄想を誰が取り合うって言うのよ? 朝まで待っていれば誰かが気づいて出してくれたって言うのに。勝手に閉じ籠った挙句、鍵を壊して店に損害を与えておいて。よくもそんな図々しいことが言えるわね」


「ほう?なら、アンタが40度以上の熱が出ていても何もしなくていいんだな?」


高宮さんがそう突っ込むと、大谷さんはグッと言葉に詰まったようだった。ボリボリと髪を掻きながら、高宮さんはそうそうと付け加える。


「ちなみに警察の捜査を止めるには、コイツが被害届を取り下げるしかない。地方レベルの上からの圧力で揉み消ししようとしたって無駄だ。こっちには国家レベルの知り合いがいる。無駄な足掻きはするなよ」

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