身代わり王子にご用心





「もともとは、僕のわがままと安全のためだったんだよ」


高宮さん(本物)は、今までの事情を話してくれた。


「カイは桃花にも多少話したかもしれないけど、彼とは10年身代わりをしてたんだ。その準備の為に1年療養として表に出なかったから、カイと僕の本当の年は24。1年遅れで高校に入ったから」

「えっ……」


桂木さんはとうに知っていたのか、驚く気配はない。さっきのこともあって気まずくて、訊くことはできないけど。


「血縁者だったし、暁にもいろいろ協力して貰ったよ。もともと友達だったのは本当だけど」

「本当に強引に、だけど」


桂木さんが呆れたため息をつく。


「はっは~そう言うなって! 葛城とヴァルヌス王宮の一部には知られてるんだし。まぁ、それが縁で新しい事業やプロジェクトも立ち上げたし。入れ替わりも無事完了したから、万々歳じゃないのさ」


やたら明るい(新)高宮さんだけど、10年もの長い間異国の王子が日本で他人の身代わりをするなんて。一体どんな理由があったんだろう?


「そうそう、カイが僕の身代わりした理由だけど。というよりも僕がカイになりたかったんだよね」


高宮さんは意味がわからない事を言うけど。カイ王子になりたかったというのは?


「小国ながらも、生まれながらに王位継承権を持つカイが妬ましかったんだ。カイが十になる前には父が亡くなって、自動的に王位継承1位で。将来の国王が約束されてるだろ。僕もヴァルヌスの王族の血が流れてるのに、なんで……ってさ」
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