身代わり王子にご用心




「わあっ! 白鳥さんだ~」


駐車場からしばらく歩くとある池で、白鳥が二羽羽を休めてたから。朱里ちゃんは早速大はしゃぎ。


「ジュリア、あんまり乗り出しちゃダメよ。落ちてザブンってなっちゃうから」

「うん! あ、なんか鳥がいるよ。もぐっちゃった」

「あれはカワウって言うんだよ~」


はしゃぐ朱里ちゃんをマリアさんが注意して、朱里ちゃんの疑問には高宮さんが答える。


3人仲良く手を繋いで並んで歩く様は、まるっきり幸せな家族そのもの。


「うっわ~馴染んでるって言うか……ホントの親子みたいですよね、あの3人」


藤沢さんがしみじみと出した言葉に、私も同意して頷いた。


「そうだね。マリアさんって本当に子どもが好きなんだなあ……見習わなきゃね」

「そうですね。わたしもお店を作る以上、子どもの扱いは長けておかないと」


ムン、と藤沢さんは拳を作り腕を上げる。


「それに、自分に子どもが出来たら、嫌でも向き合わなきゃ駄目ですもん」

「あらら、未来に子どもが出来るってあんまり想像出来ないわね」


あれ? 何だか聞きなれた声が……と振り向くと、そこにいたのは春を先取りしたような、薄味グリーンのワンピースにダッフルコートを着た妹の桜花が立ってた。


黒髪を軽く束ねて編み込み、メイクは春を意識した淡い色彩。足元は踵の高さがあまりないブーツ。とはいえ流石にお洒落は忘れてない流行のデザインだった。


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