身代わり王子にご用心




隣の建物を見せてもらって驚いた。


Uスーパーが丸々移ってきたような……。


「本当にスーパーができてるなんて……」

「スーパーとは言っても、普通のスーパーマーケットとは微妙に違う。現代に見合った利便性や手軽さをそのままに、もっと自然な形で地元産の商品を生かす形態を整えたんだ」


カイ王子が木彫りのクマに見える立体形パズルを手にして、それをばらすと。不思議なことに1ピースがどれも同じ形にしか見えない。


「この木の立体パズルは、どんな形にも変えられるんだ。アイデアは雅幸が出した」


そう話ながら好きな形に組み立てるカイ王子は、とても楽しそうだ。やっぱりおもちゃと子どもが好きらしい。


「カイは本当に、子どもが好きなんだね」

「ああ、何人いたって一緒に楽しめる自信があるぞ?」


カイは何だか不穏な笑顔を浮かべてらっしゃいますが……


「スーパーの店員でもあるが、副業として王子をする父親というのも、お買い得だと思うが? 今ならタイムセールで特売中だぞ」

「……そ、それは返品は効きませんよね?」

「もちろんだ。幸せになる保証書もついてる。お買い得だな」

「それでしたら……買います」


私がそう答えると、突然フワリとカイ王子に抱き上げられた。


「よし、じゃあまずはサンプルを使ってもらおうか」


ニヤリ、と極上の笑顔を浮かべたカイ王子のブルーグレイの瞳は……。


どんな肉食獣よりも獰猛な光が輝いてました。




その答えをちょっぴり後悔するはめになるのは、約2ヶ月後の話――。





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