身代わり王子にご用心




今私が住んでいるのは、おそれ多くも王太子妃用のお部屋。

メインとなる居間だけで20畳くらいの広さがあり、豪華な織りの絨毯が敷き詰められ。壁にもふわふわの織物が掛けられている。


天井には重そうなシャンデリアが吊り下げられ、あちこちに中世の美術品があるけれど。時折日本の美術品もありちぐはぐ。


それもそうだ。かつては王太子妃として弥生さんが住まわれた殿なんだから。


居間の他には寝室に書斎に趣味の部屋、談話室に衣装部屋に着替等に使う身支度部屋、お風呂にトイレと侍女の控え室がある。他にもあったけれど、使わないから忘れました。


私がソファで埋もれてるのは談話室で、10畳ほどの広さがある。


もう12月に入るから標高のあるヴァルヌスは寒い。最高気温でも6℃を切るから、外出時は厚着が基本だ。


石造りの部屋はそれだけで冷えそうだけど、あちこちに織物が掛けられ、ふかふかの絨毯があるし暖炉でも常に火が点されているから割と暖かい。


それなのに、カイは意外と心配性で。必要以上に厚着をさせて、更に保温させようとする。


「いくら妊娠初期でも、神経質過ぎるよカイ」

「いや……そうなのか? 私には何もかも初めてのことだから、よくわからない」


照れたのかふてくされたのか、プイッとそっぽを向いて頬を掻く仕草がかわいい。


そういえば、ふと私はあることを思い出した。


「そういえば、倉庫で閉じ込められた時。カイがプチプチでぐるぐる巻きにしてくれたことがあったよね」

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