身代わり王子にご用心



「違います!」

「ムキになるって怪しいんじゃない? 違うなら堂々としておけばいいだけでしょ?
疚しいことがあるからそんな風に必死になるんじゃないの~ねえ、浅井さん。そう思わない?」


大谷さんはたまたま通りがかったパートの一人を捕まえて、賛同を求める。目を白黒させて意味がわからない、と言った感じでいたパートさんも。大谷さんには逆らえないからか、コクコクと首を縦に振る。


(わざと気が弱い人を捕まえて、しかも人の出入りが多いロッカールームの前を選んで攻撃してくるなんて……)


最悪、としか言えない。


一階のフロアで働いている人は夏の盗難騒動を知らない人も多いのに、大谷さんはよほど私を盗人呼ばわりしてそれを広めたいらしい。


(なんで……なんでそんなに私を目の敵にするの? 私が何をしたって言うの!?)


彼女とはフロアが違うから、最初からあまり関わりがなかったし。迷惑を掛けたり失礼なことをした覚えもない。なのに、なんで? どうしてこんなに酷いことをされ続けなきゃならないんだろう。


私はただひたすら歯を食い縛り耐えると、足早にその場から立ち去った。


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