身代わり王子にご用心



流石にそれはムッときて、いつもはしない反論を口に載せた。


「これは、お母さんの誕生日プレゼントに……って、小さな女の子が1年一生懸命貯めてきたお金なんです」


それを聞いた大谷さんは数度目をパチパチさせた後、プッと吹き出した。何が可笑しいのか、口元を押さえながらクスクス笑う。


「いやだわ、お小遣いが10円や1円単位って。うちなら幼稚園児だけど、500円単位であげるわよ。今は平成も26年よ。今どきどんな貧乏人?」

「……」


何の根拠もなく表面的なものしか見ずに、バカにして嘲笑う。どちらが愚かなのか、と思ったけど。いちいち相手をするのもバカらしいからスルーしてレジを打ってると。その態度が気に入らなかったらしい大谷さんが、目を釣り上げて私の手首を掴んだ。


「ちょっと待ちなさいよ。わたし、こんな大量の10円玉をレジに入れないで、って言ったわよね? あなた一体何を聞いてたわけ!?」


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