身代わり王子にご用心



ところが、予想以上に在庫がひどい状態になってた。


在庫はだいたい玩具や雑貨やカバンなんかの部門ごとに区分けされて置かれているんだけど、細々とした雑貨の在庫が合わない。よくよく探してみれば、全く違う部門の棚に押し込まれてたりしてた。


背が高い棚もあるから、脚立や踏み台を使い探しながらのチェックは時間が掛かるし、とにかく疲れる。社員の中には在庫の区分けを荒らされるのをひどく嫌う人がいるから、品物を動かしたら慎重に戻さなきゃならなかった。


あっという間に30分が過ぎて、焦りを感じ始めた。早く済ませなきゃ、と思うのに。まだ半分も終わってない。


ところが、9時を過ぎてからとんでもないことが起きた。


ガチャリ、と外側の鍵が締まったような音が倉庫に響いたからだ。


「嘘っ」


横開きの扉を開けようとするけど、ガチャガチャと言うだけで全く隙間も開かない。


まだ通る人もいるか、とドアを叩いて呼んでみるけど。誰一人反応がなかった。


――閉じ込められた――


そう気づくのに、時間はかからなかった。


< 69 / 390 >

この作品をシェア

pagetop