身代わり王子にご用心




……ああ、まただ。


どこまでも暗い影が、私を覆い尽くす。


今回の影は特に大きい。どこを見ても他の色が見えない。


泣いても、泣いても。誰一人として助けてくれない。


まるで、現実と同じように――。





暑い、と感じて目が覚めた。


まばゆい光が目に入って、一瞬目がくらむ。手のひらを翳そうとして、手が動かせないのに気付いた。


あれ? と寝起きの頭でぼんやりと考える。見慣れない光景に、自分はどこにいるんだと考えて。ゆっくりと現状を思い出した。


(そうだ。私は倉庫に閉じ込められて……)


体を起こそうとして、やっぱり動かないと気づく。あれれ? 何でと考えて自分の体を見て絶句した。


私、プチプチでぐるぐるとくるまれてますよ。


自分はいつの間に売り物になったんだ、と呆けた考え方をして。そういえば体が暖かいと感じた。

プチプチは包装用緩衝材だけど、小さな膨らみに空気が入ってるから暖かくなる。空気というのは最高の断熱材だと昔本で読んだ。


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