君の世界からわたしが消えても。

「こういう夢って、明晰夢っていうんだっけ……」


 数日振りに眠れたはずなのに、寝た気がしないのは夢のせい。


 だけど、不思議と体に疲れは残っていないし、頭もすっきりしている。


 記憶をたどるような、わたしの気持ちを探るような、そんな夢。


 どんな心理状況になれば、こんな不思議な体験ができるんだろう。


 わたしの記憶にある過去が忠実に再現されて、その中で自由に動いて考えることができるなんて……。


 やっぱり夢じゃなくて、タイムスリップなのかも。


 ……考えても、仕方ないよね。


 そう思って体を起こすと、指の隙間からするりとなにかが抜けていき、ベッドの上にぽとりと落ちた。


 見ると、それはミヅキのペンダント。


 大切に扱わないとけないのに、握ったまま眠っちゃったみたいだ。


 これからは気を付けなきゃ。
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