君の世界からわたしが消えても。

 ミヅキが亡くなってから、2回目の誕生日。


 去年の今日は、まだ現実を受け入れられなくてお祝いなんてムードじゃなかった。


 だけど、あの日からもう1年半経った今、心はもういくらか落ち着いていた。


 ふっと息をついて、まずは近況報告をする。


「久しぶりだね、ミヅキ。あっちで元気にやってる? あの日から1年半経って、お母さんもお父さんも、やっと前みたいに笑うようになったよ」


 わたしの家の中の空気は、ここ最近になってやっと以前のものへと戻り始めた。


 ミヅキがいた、前は当たり前だった光景に。


 それでもね、ミヅキのいた場所は埋まることがないんだ。


 食卓の空席、空っぽのミヅキの部屋。


 家のいたる所に、ミヅキの定位置だった場所に、空白がある。


 それに、お母さんやお父さんは、わたしの顔を見るとすごく悲しそうな顔をするんだ。


 わたしとミヅキは似ていたから、まだこっちの世界にミヅキがいるって錯覚しちゃうんだろうね。


 それがすごく悲しい。


 こんな気持ち、ミヅキに気付かれちゃいけないね。


 きっと、心配するもん。


 だから、口に出して言えないことを、心の中でそっと呟いた。

< 20 / 298 >

この作品をシェア

pagetop